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どちらにせよ。このままでこの土地で生きていくにはリスクがあまりにも高すぎることは明らかだった。そこは魔物のテリトリーで助けを求めても誰にも声は届かない森の奥である。だが人間は信用できない。どちらのもとで暮らしても絶望しか見えない板挟み。独りきりで居たのなら彼女は楽に終われる道を選んできたかもしれない。子供達には感謝しなければな。
リスティー=ワズリーは悩みに悩み抜いた末、苦渋の選択をする。
「わかったわよ…。あんたの提案に乗るわ。みんなで生きるためにはそれしかなさそうだから…百歩譲ってあなたの提案に乗ってあげるけれども! 簡単に私の力を手に入れられるとは思わない事ね。こっちはいつだって終われる覚悟なんだから…」
「冗談でも言うな…。俺が終わらせたりしねえよ…」
話が纏まったところで早速ではあるが彼女と子供たちをユグド王国に連れていくか。
「ちょ…ちょっと待ってよ! まだ、信じたわけじゃないからね! でも、一方的に助けられるのは虫唾が走るのよ! だから、1回だけ…今、1回だけ私の能力を使用してあんたのことを見てあげるわ…感謝しなさい!」
「………リスティー…」
「な、何よ?…」
思ってもみなかった彼女からの提案に素が漏れる。
「お前実はチョロいだろ?」
リスティーは顔を真っ赤にさせながら俺に向かいローキックを繰り出してくる。汚い言葉のオンパレードを浴びせながら蹴って蹴って蹴りまくる。全く痛くないどころか俺の鍛えられた足を蹴ったりしてリスティーの足は大丈夫なのか心配になってしまうくらいの肉体的弱さである。ユノの方がまだ強いキックを繰り出せるであろう。
「さっさとこっちに来なさい! あたしの気が変わらないうちに!」
「何だ。随分と優しいじゃないか。思った通りの女性だな…」
ローキックは続くが俺の固有魔導は今ここで鑑定してくれるらしい。
ありがたいことである。感謝感激である。
「あんたと居ると調子が狂うのよ!…全く……」
「そうか。俺は案外楽しいけどな…」
「ムカつく!!…はい。結果出たわよ………」
「早いな…リスティーは優秀なんだな…」
「ムカつくから褒めるの…やめてよ…」
嬉しそうにしているではないか。
態度と表情が一致しない奴だな。
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