/ 1306ページ

始まりの道ノ幕

(1/5ページ)

始まりの道ノ幕




京の冬は冷える。

雪国とはまた違う、キンッと底冷えしきった空気が刺さる様な寒さが辛い。

そんな京の町にもまだ遠くではあるが、春の気配が静かに近付き始めた夜の出来事。




男が一人、灯りも持たず小路を歩いている。

今宵は満月。

家々の軒影がくっきりと出来る程の月明かりであった。

もとより色白なのであろう男の肌は、月光の中で蒼白くも見える。

通った鼻梁と引き結んだ形の良い唇。

闇の中で光りそうな程の鋭い双眸だがその瞳を時折、チラと左右に流す仕草に…何処か独特の色気を感じる。

背丈も高く、羽織物の上から見ても逞しそうな身体つき。

長めの美しい黒髪を、キリリと惣髪に結わえたこの男は、恐ろしい程の美丈夫だった。

歩きながら前を見据えていた男は、ほのりとでも笑えば色気が増しそうな唇を少し開き白い息を吐く。

何か考え事があるのか…少し眉間に皺を寄せた険しい顔だが、それが男の美しい顔立ちを更に引き立てていた。


不意に冷たい風が吹きヒラリ、と散らつく白い…

(…雪か…)

立ち止まり、フッと空を見上げた男の顔から険しさが消える。



/ 1306ページ

始まりの道ノ幕

(2/5ページ)

みんなが送ったスター数

10469

この作品にスターを送ろう!

明日のスターも待ってます!
(1作品につき1日1回 押せます)

新着ピックアップ

急上昇ランキング|歴史・時代