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イチ。

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イチ。




その人と初めて会ったのは、夏の終わりのことだった。





上半期が終わってから業績を見て求人に乗り出す企業も多いらしい。
ちょうど需要が途絶える狭間の時期。
ブランクのある身での転職先探しには向かない苦しい時期だったことは、後から知った。


希望職種や地元企業はことごとく落ちたから、私はすっかり思い込んでいた。
――私って、無価値。


両手の指で数えきれなくなってから、これが何社目かを数えるのを辞めた。
一次面接はもう慣れたものだ。
感触が良いと思ったところほど、採用見送りのメールは素っ気なく冷たかった。


全て失ってゼロからのやり直しなのに、スタートが切れない。
自信を無くして精神を蝕んで、投げやりになって今日にでも巨大隕石が日本を直撃すれば良いのにと本気で思っていた。


明日を考えるのが面倒で。
生きる術を考えるのが面倒で。
死に方に頭を悩ませるのすら面倒で。
だから他人任せに、明日が来なくなることを願った。
巨大隕石でも日本沈没でも、別に何でも良かったんだけど。


この頃の私に、ある友人が言った。
『あんた、そんな負のオーラ背負ってたら、いつまで経っても受かるモンも受からないよ』
そうかも知れない、と思った。
けど、オーラを自在にコントロールする術があるなら教えて欲しいものだ。

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