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「お前の祖父は、西園寺正宗か?」
高校生活が今日から始まる1年生の教室。朝礼が終わり、教室に戻ろうとした俺に、全く面識の無いクラスメートが話しかけてきた。俺は自然と見下ろす形になりながら
「そうだけど。それが――」
 それがどうかしたんだ?と、返事する前にそいつは俺を睨みつけた。
「西園寺正人、お前に剣道で勝負をしたい」
 この一言で和やかな廊下の空気は一瞬にして凍りついた。そして、場にそぐわない突然の挑戦状(?)を叩きつけられた俺へ一斉に興味と好奇心の視線が突き刺さった。どう返していいのかわからず、俺は口を開いたままボンヤリしていたと思う。
「俺と勝負するのか?しないのか?」
 いきなり挑戦を持ちかけた相手は返事を催促する。
「剣道部に入るつもりだから練習…?だったら、良いけど。どういう理由で俺とお前が勝負しないといけないんだ?」
 俺の返事がさも意外だったように、小柄な相手は俺に聞き返した。
「俺は貴船駿。貴船十郎の孫だ。お前、貴船の名前に聞き覚えは無いのか?」
「え……ごめん。マジで全然知らないんだけど……」
 俺の言葉に教室はざわついた。貴船駿は大勢の見ている場で、俺の返事が気に障ったのか、駿は眉をひそめて顔を紅潮させた。
「すまなかった。それはこちらの勇み足だった。」
 駿は少女のような外見のわりに男っぽい声の持ち主だ。彼が冷静に非礼を謝ってきたことで、俺はやたら古風な言い回しの同級生が臨戦態勢を解いたのだと思った。
「しかし、俺はお前に会ったら祖父の汚名返上の為、立会いをしたいとずっと稽古を続けていたのだ。祖父同士の立会いを知らなかったのは慮外だが、俺と勝負をして欲しい」
 改めて貴船は俺を見据えて戦いを挑んだ。
「放課後待っているからな」
「え、ちょっと待っ……」
 ダメ押しのようにそれだけ言うと貴船は踵を返して席に戻った。俺も貴船を追いかけ慌てて教室に入ろうとしたが、入り口の鴨居に勢いよく頭をぶつけ眼鏡が吹き飛んだ。

 これが俺と貴船駿との最初の会話だった。

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