/ 517ページ

第一章【ニセモノの恋人?】

(1/55ページ)

第一章【ニセモノの恋人?】

    1


 うららかな日和の、四月最後の、土曜日の午後。

 同居している祖母、絹代(きぬよ)の一言で、満月(みづき)の穏やかな休日は、いきなり破壊された……。

「満月」

「なに?」

「私、再婚するから」

「……は?」


    ◇


 山本満月(やまもとみづき)、二十六歳。独身。彼氏、無し。

 手取り十八万の派遣事務で、つつましく稼いでいる。

 両親は既にない。仲睦まじい夫婦だったが、結婚二十年の記念に出掛けた旅行先のバス事故で、亡くなる時も一緒だった。

 十年前にいきなり親を失くした満月と妹を、親代わりに育ててくれたのが、父方の祖母である、絹代だった。

 祖母、山本絹代、七十二歳。夫とは四十年前に死別。彼氏、有り。

 かつて二時間サスペンスドラマが流行した昭和の時代に、人気推理作家として、数々のヒット作を産んだ、小説家。

 そんな祖母と孫は、絹代が三十年前に購入した3LDKのマンションで、女二人だけで暮らしていた。

 そこに去年までは、五歳下の妹の、桜衣(さえ)も加わっていたが、今は、同じ区内にある新築マンションで、可愛い新妻をやっている。

 自分より五歳も年下の妹に、先に結婚されることもショックだったが、何よりショックだったのは、その相手だった。

 マンションの隣の住人である、十川(とがわ)さんチの央都(ひろと)君は、満月の初恋の相手だった。

 二年前に、二人が付き合っていることを聞かされ、すでに指輪も貰った仲だと妹から報告を受けた時、満月は心の動揺を悟られまいと必死だったが、しばらく激しく落ち込んだ。

 半年かけて自分を立て直し、妹の結婚式では、どうにか姉らしく振舞うことが出来たが、いまだに妹夫婦の新居を訪問する気は起きないし、夫婦として並ぶ妹と初恋の君を見ているのも、辛い。

 そんな大ダメージから、ようやく立ち直りかけた、ある春の日。

 今度は祖母が、再婚すると言う。

 

/ 517ページ

第一章【ニセモノの恋人?】

(2/55ページ)

みんなが送ったスター数

13589

この作品にスターを送ろう!

明日のスターも待ってます!
(1作品につき1日1回 押せます)

新着ピックアップ

急上昇ランキング|恋愛