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#episode:1

 目の前でひたすらにコーヒーを煽っている、かつての恋人を眺めながら、日菜子はここに至るまでの記憶を呼び起こしていた。慶(けい)との思い出を一から辿ろうと思うと、3年の月日を飛び越えねばならない。日菜子にとってはたやすいことだった。なぜなら日菜子は、ひとつ年上の彼のことが、好きで、好きで、たまらなく好きで仕方なかったのだ。彼との将来を夢見て眠らなかった日はないくらいに。

 慶と自分の愛情が平等だったとは思わない。好きになったのも告白したのも日菜子からだった。それでも、慶から一定の情は受けていたし、行けるぞという確信を持って挑んだ結果だった。慶だって日菜子のことを悪いようには考えていなかったはずだ。

 それがどうしてこんなことに……。彼の手元から視線を移動させ、ちらりと上目遣いに見ると、慶は無表情で日菜子の返事を待っていた。さりげなく腕時計を見る。2人が店に入ってゆうに2時間は経っていた。慶が別れ話を切り出してから1時間と50分。あとは、日菜子が決断するだけだ。

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