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01_部下がやってきた

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01_部下がやってきた

その車はさっきの信号でも、この車の左隣に停まったのだった。

国産の黒いSUV。


「なに笑ってるんだ?」

「隣の車がね、一緒に赤信号に引っかかり続けてるんです」

「こういうのって、一度つまずくと延々続くよな」


運転席から、苦笑まじりのため息が聞こえた。

SUVのドライバーを確認しようとしたのだけれど、向こうのウインドウに太陽の光が反射して見えない。


「車好きの男の子かな、ホイールもぴかぴか」

「SUVなら、車好きっていうより、ドライブ好きじゃない?」

「それって、言うほど違います?」

「全然違うね」


乗っているのがこの欧州メーカーのクーペであるからには、たぶん彼は"車好き"のほうなんだろう、きっぱりと主張する。

その態度が妙に子供っぽくて、私は笑った。

信号が青になり、車が動き出すと、光の角度が変わってようやくSUVのドライバーが見えた。

思った通り、私と同じ世代か、少し若いくらいの男性だ。

日差しの強い今日、サングラスをかけている。ミディアムとショートの間くらいの、さっぱりした髪型。色を変えていないところを見ると、会社員かな。

3ブロックほど国道を進んだところで、私たちはまたしても一緒に赤信号に引っかかり、SUVのドライバーが、うんざりした様子で頭の後ろのヘッドレストに片手を回すのが見えた。

ハンドルに置いたほうの手でトントンと拍子を刻みながら、彼がふとこちらに顔を向けた。

車高の違いのせいで、向こうはこちらを見下ろす形になる。助手席、すなわち車の左側にいる私とは、窓ガラス2枚を隔てているものの、1メートルも離れていない。

彼のほうも、ずっと同じ車が並んでいることに気づいていたんだろう、私と目が合うと、屈託なく笑いかけてきた。

「嫌んなっちゃうよな」なんて声が聞こえてきそうな笑顔。サングラスの奥の瞳が、きゅっと細められている。

二台は同時に走り出し、次の交差点が見えてきたとき、SUVは左折レーンに車線変更をした。

そのまま交差点で別れることになり、その際、ちょっと片手を挙げてこちらに挨拶してくれたのが見えた。

夏の日差しを浴びたSUVは力強く健康的で、私はまた、自然と顔が笑っていたことに気がついた。


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