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従兄妹

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従兄妹

沫雪は 千里に 降りしけ恋ひしくの 日長き我れは 見つつ偲はむ



沫雪よ、幾重にも降り積もれ、何日も何日も長く恋し続けた私は、雪を見てあの人のことを思います。



作 柿本人麻呂かきのもとのひとまろ 「万葉集」より

 

 私の記憶は3歳からしかはっきりしていない。しかも断片的なものだ。
 数え年で4歳になるお正月、朝早くに起こされてぐずりながらも無理矢理 温もり残るパジャマから冷たい洋服を着せられ、せかされながら車に乗せられた。

 後部座席には私と、母が寂しくないようにとキャラクター物のぬいぐるみを用意してくれて一緒に腰掛けている。
 運転をしているのは父、その横には母

 "今からどこに行くの?"

 まだ半分夢の中の私が何気なく聞いてみると、いつもより唇が濃い母がおじちゃんのところよと教えてくれる。おじちゃんとは誰なんだろう?幼い私には分かるはずもなくて微かに揺れる車の振動が心地よくて、ぬいぐるみを抱きしめて眠ってしまった。

「着いたわよ」

 そう言われてゆっくりと目を覚ますと母が抱き上げてくれる、はっきりしない頭のまま靴を履かされて地上に足をつける。
 目の前にはとても大きく食べられてしまいそうな門が口を開けて待っていた。
 前に父が入ろうとしたお化け屋敷という場所に似ていて、怖いところなんじゃないかと咄嗟に母の足に絡みついてしまう。

「どうしたんだ?」
「だって、おばけが出てくるんでしょ?」

 そう聞くと父は大きな笑い声を上げて大丈夫だよっと手を引っぱってしまう。
 逃げ腰になりながらもなんとか中へと進むけど怖くて指を口の中に入れる。そうすると少しだけ心が落ち着く。

 

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