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第一章 なんでアンタがここにいるのっ!?

 
 高校の制服に着替えた私は、カバンを持って部屋を出た。廊下には湯気による湿気と餡の甘い香りが漂っていて、一階の作業場の方から換気扇の唸る声が聞こえてくる。


 これは子どものころからずっと変わらない、朝の様子――。


 うちは江戸時代後期から続く和菓子屋で、今は祖父母と両親が仕事を分担して切り盛りしている。当たり前だけど、お盆やお彼岸、年末年始など忙しい時は私も手伝っているけどね。

 だから髪を伸ばすとお菓子作りの時にメンドいので、ショートヘアで我慢している。また、店舗でお客さんに接することもあり、その時に老舗のイメージに傷が付くということでわずかな茶色でさえも染めさせてもらえない。

 色々と制約があって不満なこともあるけれど、店や仕事には誇りを持っている。なにより私は和菓子が大好きだから。

「いってきまーすっ!」

 肩幅よりわずかに余裕がある程度の狭い急階段を降りた私は、奥の作業場に向かって大声で言い放った。そしてそっちとは反対方向にある店舗の方へ進み、靴を履いて店のフロアを歩いていく。

 お饅頭や羊羹、どら焼き、いなり寿司、みたらし団子――。

 ショーケースにはすでにたくさんの商品が陳列されている。見た感じ、今日もすでにいくつか売れているみたい。うちは朝六時から営業していて、開店直後からお年寄りが買いに来るんだよね。

 そうした整然と並べられた商品の様子を横目で眺めつつ、私はガラス張りの引き戸を開けて外へ出る。

「――うわぁああああああぁーっ!」

 のれんをくぐった直後、幽霊にでも出会ったかのような絶叫が横から響いた。あまりのうるささに、耳の奥がキーンとして痛くなる。

 顔をしかめながら声のした方へ視線を向けてみると、そこにいたのは見知った顔だった。
 

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