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第一話 わたしが犯罪者になった日

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第一話 わたしが犯罪者になった日

「まじでか」

――桜井みやび。十五点。

ざわつく教室の隅で一人、返ってきたテスト用紙を見つめて思わずつぶやく。

今日は学年末テストの返却日だ。
それほどいい点数を期待していたわけではないけれど、ここまで悪いとも正直思っていなくて、わたしは返却された回答用紙を両手で握りしめたまま固まっていた。

地理が苦手だからといってもいくらなんでもこれはない。
まがりなりにも勉強はしたし、回答もすべて埋めた。なのに十五点。三問しか合っていない。

自己最低得点だ。
動揺のあまり胸元くらいまで伸びた髪を不必要に撫でまわしてしまう。

もしかして五十点満点だったのかも、とふらつきながら席に戻り、回答用紙を凝視していると後ろから誰かにひょいっとテストを奪われた。

「あッ! 」
「げ、あんたまた赤点?」

信じられないとばかりに眉間にしわを寄せたのは幼馴染で親友のはるかだ。

白い丸襟に深緑色のワンピース。わたしと同じ学校指定の制服を着ている。

背があまり高くないわたしに比べて、長身の彼女はどことなくモデルのような凜としたたたずまいがあって彼女を見るたびに、ちんちくりんな自分の姿が情けなくなる。

    

綺麗に短く切り揃えられた髪を耳にかけ、はるかは呆れたようにわたしの答案を見るなり言った。

「バカがいるわー。目が覚めるようなバカだわー」
「こ、これでも頑張ったんだよ! でもヤマ全部外れて、こ、今回はたまたま運が悪かっただけ!」
「そもそも学年末テストでヤマ張るっていうのもどうよ? まんべんなく勉強しないからっしょ」
「ぐッ!  そ、そういうはるかはどうなの!?」

するとはるかはにやりと笑い、わたしに見せつけるように自分の答案用紙を掲げた。

「九、九〇点……」
「んふ、ぐうの音もでないとはまさにこのことね」
「ぐうッ!」

なぜ女子サッカー部のはるかが高得点で帰宅部のわたしがこのザマなのか。
ちなみにスポーツ万能なはるかに対し、わたしは運動神経を母親の産道に置き去りにしてきたような人間だ。不公平にもほどがある。

「みやび、数学はましなのにね。地理なんてただ覚えるだけじゃない」

そういいながらはるかはわたしの机の中を漁ると勝手に数学の答案用紙を取りだした。
ちょっと、と取り返そうとするも背の高い彼女の手元までは届かずひょいひょいっとよけられてしまう。

「地理はカタカナ多くて苦手なんだってば!」
「ふーん。あたしは数字のほうが苦痛だけど」
「んー、俺はどっちかっていうと漢字が苦手かなあ」

    

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