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夢と現

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夢と現

目に焼き付いて忘れられない光景がある。
小学一年生の夏、私の街は地震と津波に見舞われ一度海に沈んだ。


一面、真っ黒い海に飲まれて、私はとんがり屋根にしがみつく。
しょっぱい水を飲み過ぎて、気が遠くなる寸前だった。


轟々と響いていた音がいつのまにか静まり返り、たぷたぷと緩やかに水面が揺れる穏やかなものになっていた。


こう……、と甲高い、聞いたこともない音を聞く。
顔を上げると、黒い波間に人が見えた。


海の表面に立っているように見えるその女の鬼は、天を仰いで両手を広げ、大きく口を開けていた。
まるで深呼吸でもするように、弓なりに背を反らせ。


真っ白い満月の、その真下
泪がキラキラとツキアカリを反射した。

真夏の夜でも海は容赦なく体温を奪い、カタカタと身体が震える。
力が入らない手のひらをかばうようにして、塔の槌に腕と肘でしがみ付き、私はその光景を見上げて魅入られた。
とても、綺麗な泣き顔だった。


真っ白い、光の玉のようなものが、空にいくつも渦を巻き、渦の中心から真直ぐ女に向かって落ち口の中に吸い込まれていく。


……食べている。
何を?


すぐ目の前を、その光の玉が過って咄嗟に手を伸ばす。
触れた気がしない。けど確かに、しっとりとした何か。


その玉も他に違わず、空に昇って渦に加わる。
そして、とその先を見て、ぎくりと身体が強張った。

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