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【ナナホシテントウ】 コウチュウ目テントウムシ科

「君にとって俺ってどんな虫?」
 昆虫マニアの彼の質問は、私には少し難しい。私の知っている虫の種類なんて、ほんの僅かなものだから。
「可愛いイメージだから、テントウムシ。星が七つのやつ」
 私の答えに、彼はにやりと笑った。
「ナナホシテントウって肉食だって、知ってた?」

◆◆◆

【ナミアゲハ】 チョウ目アゲハチョウ科

「あなたにとって私はどんな虫?」
 俺は即答する。
「ナミアゲハ」
「どうして?」
「俺が一番好きな虫だから」
「……照れるんですけど」と、彼女は頬を染めた。
 俺は思い出す。セーラー服とネクタイ――。白と黒だけの色彩にも関わらず、彼女は世界の何よりも輝いて見えたのだ。

◆◆◆

【ゲンジボタル】 コウチュウ目ホタル科

「ホタルは、棲む地域によって光るテンポが違うんだよ」
「私、みんな同じだと思ってた」
「関西はせっかちに点滅、関東はのんびりとかね。光は、会話代わりなんだ。光る早さが合わないと、カップルは不成立」
 彼はつまり、私たちのリズムがぴったりだと言いたいのだ。
 私も、そう思う。

◆◆◆

【ヘイケボタルだよ】 コウチュウ目ホタル科

 彼女の希望で蛍狩りにやってきた。
「わあ、素敵」
 光の群舞に歓声があがり、繋いだ手に力がこめられる。どうやら、満足してもらえたようだ――そう思って彼女を盗み見ると、夜闇に浮かぶ顔は俺に向いていた。
「ちゃんとホタル見てる?」
「見てる」
 彼女は俺から目を逸らさずに答えた。

◆◆◆

【ツヅレサセコオロギ】 バッタ目コオロギ科

 澄んだ虫の音に、彼女が俺を見た。
「ツヅレサセコオロギ」
「変な名前」
「綴るとか刺すとかは縫い物のことだよ。昔はこれ聞いて冬支度を始めたって」
「私も秋物欲しいな。買い物、付き合ってね」
 彼女はむき出しの肩を抱いた。夜冷えする帰り道を、真夏より少しだけくっついて歩く。

◆◆◆

【ナミテントウ】 コウチュウ目テントウムシ科

「冬眠したい」
 暖を求めて手を擦り合わせる私を、彼は「熊か虫だな」と笑う。
「冬越しならテントウムシを見習えよ。俺もあんなふうに眠りたい」
「どうやって?」
 彼は一瞬だけ私を抱き寄せ、すぐに離れた。
「こうして春までずっとくっつく」
 私の頬に熱がのぼる。これは確かに温かい。

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