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第一章 壊れた日常

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第一章 壊れた日常


 世の中はなんて不公平なんだろう。楽して悠々自適に暮らしているヤツがいる反面、苦労して真面目にコツコツやっているのに次々と不幸な目に遭う人間もいる。もちろん俺は後者だ。

 就職氷河期の真っ只中に何百社も応募し、やっとのことで就職。そこは零細企業で安月給、サービス残業当たり前。もちろんボーナスなんて出たことない。それでも愚痴を漏らさず、ひたすらコツコツ働いた。

 それだけ頑張れたのは妻と娘がいたから。妻とは高校の時に知り合い、就職してすぐに結婚。翌年には娘が生まれた。生活は苦しかったけど、ふたりと穏やかに暮らせるだけで俺は幸せだった。

 疲れて家に帰っても、日々成長していく娘の元気な姿を見たり妻の美味しい手料理を味わったりすると明日もがんばろうという気力が湧いてくる。そしてこのまま定年まで勤めて、娘はいつか誰かに嫁いで、俺は妻とともに平穏な老後を送るものだと信じて疑わなかった。

 ――でも人生というのは何が起きるか分からない。『日常』はそこにあるのが当たり前だと思いがちだが、決してそうじゃない。まさに一寸先は闇なのだ。俺は最近、日常を失ってみて初めてそれを思い知らされた。

 一か月ほど前、俺は妻と娘を同時に失ってしまった。ふたりは一緒に買い物に出かけ、その時に飲酒運転の車に轢かれて亡くなってしまったのだ。葬儀の時、俺はショックが大きすぎたせいか、どうやって過ごしていたのか記憶がない。

 さらに不幸は連鎖する。俺の務めていた会社が不祥事を起こし、その影響で三日前にとうとう倒産。四十歳という俺の年齢を考えれば、再就職も簡単にはいかないだろう。しかも家族を失って空虚なマイホームは、まだ二十年ほどローンが残っている。

 なんで俺ばかり不幸な目に遭うんだ? 何か悪いことをしたのか? 汚いことをしているヤツらは人生を楽しんでいるのに、真面目に生きてきた俺には悲しみと苦しみばかり。


 ――もう生きていく気力なんて残っていない。今すぐにでも自ら命を絶って、あの世にいる妻や娘に会いたい。不幸に満ちたこの世からエスケープして、楽になりたい。
 

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