序話 「魔女との出会い」

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序話 「魔女との出会い」

 こんな日が来るなんて信じたくもなかった。どうしてこんなことになったのだろうと、何度自問しても、自分すら答えを出してくれない。 「……手を、出しなさい、ニーロ」  血が絡んだ声で、〝彼女〟はそれでも揺らがない視線を向けてくる。拒否したい心を叱咤した。怯えながら手を出せば、死にかけとは思えない力強さで握り締められた。 「『血よ巡れ。千代(ちよ)巡れ。千(ち)世(よ)巡れ。我が魔力に宿りし契約よ、ここに命ず。新たなる主の元に在れ』」  詠唱に合わせて強い、しかし目を焼かない不思議な光が〝彼女〟を包む。その光は徐々に手に集中し、やがて小さな手に移っていった。移った光は、現れた時同様徐々に消えていく。今度は、震える小さな体に溶けるように。  光が完全に消えると、〝彼女〟は青ざめた顔で笑った。永遠の別れが目の前に迫っているとは思えないほど、凄艶な笑み。〝彼女〟を見つめるラズベリーの双眸は反対に涙の中に沈んでいる。 「……これで、終わりよ。これからはあなたが次の魔女。……ふふっ、男の魔女を生まれさせたのは私が初めてじゃないかしら。でも、いいわよね。契約を途絶えさせることの方が……よっぽど、駄目だもの、ね……」     
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