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第1章

 深夜一時。二十四時間営業のレストランは、この時間でもぽつぽつと客が入っていた。トラックのドライバー、海外に行く都合で早起きしたらしい、トランクを持った女性。
 またドアの開く音がして、バイト店員のYは「いらっしゃいませ」と声をかけた。
 入ってきたのは、二十代の男だった。
 どこかで見た事がある顔だ、とYは思った。そうだ。一週間くらい前の事だ。

その日はちょっとした用事で遅刻するハメになり、Yはまさに今頃の時間、レストランへの道を急いでいた。その途中、コンビニの前で、この男とその彼女らしき女が話していたのだった。
『よし、これで幽霊が出ても大丈夫だな。塩も買ったし、お酒も買った』
『ねえ、本当に行くの? やめない?』
 肝試しか、とYは見当をつけた。この近所には、ちょっと有名な廃墟がある。夏になると探索に行く暇人が多い。どうせこいつらもそこへ行くんだろう。でもまあ、自分には関係のないことだ。

 その時はそう思って通り過ぎたのだが、今になってどういうわけか急にむかっとしてきた。俺は彼女もなく、こんな時間まで働いているのに、こいつは夜女とキャーキャー楽しんでいたのだ。ちょっとぐらい古典的ないたずらをしても罰は当たらないだろう。
 Yはにやりと笑うと、コップを二つ用意した。男の前に一つ、その向かいの、誰もいない席にもう一つを置く。
 その時のぎょっとした客の顔は見ものだった。相当怖かったのか、テーブルに置かれた手が震えていた。
 あまり怯えさせたらかわいそうだし、店にイタズラをチクられても困る。Yはさっさとネタばらしをしてやることにした。
「すみません、ただのイタズラですよ。大体一週間くらい前、肝試しに行ってましたよね?俺、見てたんです」
 客に怒鳴られないうちに、Yは余分なコップをお盆に回収し、さっさと奥へ引っ込んだ。

 下がっていく店員の背中を見ながら、客は体の内側から湧き上がってくる震えをなんとか押さえようとしていた。
 見られていた。気付かなかったが、見られていたのだ。
 あの日、コンビニで買い物をしてから出かけた廃墟で、彼女を殺した。
  あいつが浮気していることは薄々勘づいていた。だから、誰もいない廃墟でそれとなく探りを入れてみたら、こっちが秘密を知っていると知った奴は、急に逆切れをしてきた。だからカッとして首に手をかけた。気がついたら彼女は動かなくなっていた……

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