第一章 幽霊タクシー

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  「そろそろお帰りじゃないですかー?」  爺さんの家に上がってお茶を呼ばれていると、ふらりと菜切がやってきた。  この商売上手め、と晴比古は睨んだが、菜切は、 「いえいえ、雨も降ってきましたしね」 と笑っている。 「仏像を探すくらいと簡単に考えてたが、今日一日で片がつくような話じゃないじゃないか」 と晴比古がもらすと、 「それなら、少し走ったところにいい宿がありますよ」 と菜切が言ってくる。 「こんなところにか」  先生、先生、と深鈴が苦笑いして止めてきた。 「泉質のいい温泉が近くにあるからですよ」  そう菜切が言っている側から、深鈴が、へー、そうなんですか、と言いながら、携帯をいじり始める。 「いちいち、志貴にメールするなーっ」 とそれを取り上げた。
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