-檄- 鳴の道 壹

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総司に言われ、薄々は…。 だから総司。 お前も…ある意味は日々の賜物だったってのも間違いでは。 まぁ…テメェの場合その時だけの賜物じゃあねぇだろうがよ。 莉亜が何故、と話してた時の総司を思い出すと…それにさっきの莉亜が重なった。 …チッ!……クソ。 『お前は…』 お前らは 『自分が悪いとおとしめるな』 小っせぇ身体で耐えたんだろ。 自嘲…嘲笑すんじゃねぇよ。 …馬鹿野郎。 「ッ…歳三様?」 瞬いた身体を深く包み込むと、行き場の無い憤りが湧いて来ていたのが、徐々に凪いで行く。 俺がまた憤った所で。 お前らはもう、前を見てんだ。 『それはこの先もきっと役立つ筈。俺が直々に教えてやれねぇのだけは残念だが』 「へ?」 『良いモン持ってんじゃねぇか。凄ぇな。自慢して良いぜ?』 無駄じゃない、日々の賜物を。 「凄くなんて…自慢て…ふふッ考えた事もありまへんどした」 …凄ぇんだよ。 『俺ぁきっと自慢するぞ?』 「あは!嘘や。歳三様はそんなんせぇへんもん。絶対」 『良く分かってんじゃねぇか』 クスクス笑う声が呼び水になり、俺の口元にも柔らかな笑みが容易く広がったのが分かる。 話を聞かせてくれて 思い出させちまって 悪かった。 なんざ言わねぇ。 礼も謝罪も、必要無いんだろ。 只。 本当に。 俺は莉亜の偽叔父夫婦の顔すら知らねぇのが残念だが。 貴様らに無性に会ってみてぇわ 糞野郎共が…! 『俺に…教えて欲しかった?』 「ッ!?」 コロッと変わった悪戯っぽい声を、それでも至って低く囁けば 「ぅ…遠慮します…」 思った通りの反応を。 『フッ。遠慮する仲じゃねぇっつったのに。残念』 それは本当に。 本気で残念だ。 つか…無念?
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