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ふと視線のはしに見知った背中が二つ、出口の方へ歩いていくのが見えた。
三人に断りを入れて、その背中を追いかけた。
「愛ちゃん!」
私がそう声をかけると、ビクリと肩が上がってゆっくりと振り返った。
「・・・円」
目には涙が浮かんでいて、愛ちゃんは弱々しく私を睨んだ。
「円さん、本戦進出おめでとう。この調子で明日も、頑張って下さいね」
愛ちゃんの隣に立っていた小鳥遊先生が、私に向かってそう言った。
「ありがとうございます」
「・・・それじゃあ、私は先にホテルに戻りますね。
愛さんも、暗くならないうちに」
「・・・はい、先生」
愛ちゃんの肩にそっと触れた小鳥遊先生は、小さく頷くと足早に去っていった。
その後ろ姿が見えなくなってから、愛ちゃんに視線を戻した。
目が合うとバツが悪そうに視線をそらされた。
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