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私は悩んだが、優香の押しに負け、その場をお開きにして会社に戻ることにした。
支払いは私がすると言ったが結局割り勘で済ませ、私たちは店主に手を振り店を出た。
表に出るとさらさらと心地よい風が吹いてくる。
初秋の風は酔った身体を冷ますには少し頼りなかったが、私の背中を優しく押してくれているようだった。
「優香、終電、間に合う?」
私が心配するも、優香はもう歩き始めていた。
「大丈夫、走るから。美尋、がんばって」
優香はそう言いながらすでに足を顔とは反対方向へ向けていた。
「ありがとう。高梨さんによろしく!」
彼女は返事もままならないうちに手を振って地下鉄へもぐる階段を下りて行った。
私は彼女を見送ると、飲み屋の電飾をかき分けて再び仕事場への道を引き返した。
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