●3 女神の失踪●

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 二十年以上も前となると、今みたいに法整備もされていないから、サラ金などの取り立ても厳しかったに違いない。高利で貸す上に、利息が払えなくなると、厳しい取り立てが待っている。きっと大変だったのだろう。 「離婚されてから智恵子さんと連絡は取っていましたか?」 「いいえ」と言う代わりに、首を振って答えた。 「では、離婚をされてからあなたが直接最初に連絡を取ったのは、いつだったのですか?」  陽介は首を傾げて、目をきつく閉ざした。いつのことだったか、必死に思い出しているようだ。 「やはり七年前ですね。離婚してからそれまでは、代理人を通してというのはありましたが、直接連絡取ったことはありません」 「それからは?」 「三年前です。それから去年、そして一昨年も会いました。智恵子が観光で台湾に来ていましたので」  陽介は観光という言葉を強調した。 「会おうという連絡は、智恵子さんからですか?」 「そうです。その時もきっぱりと、来たついでに、と言っていました」  でも、来たついでに、にしては、遠すぎる距離ではないか。 「その七年前と三年前に、どうして連絡を取ったのですか?」 「南帆というのは私と智恵子との間に生まれた子どもなのですが、その子が七年前に自殺して、三年前に仮葬儀が行われたからです。彼女もいちおう実の母親ですから」
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