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二十年以上も前となると、今みたいに法整備もされていないから、サラ金などの取り立ても厳しかったに違いない。高利で貸す上に、利息が払えなくなると、厳しい取り立てが待っている。きっと大変だったのだろう。
「離婚されてから智恵子さんと連絡は取っていましたか?」
「いいえ」と言う代わりに、首を振って答えた。
「では、離婚をされてからあなたが直接最初に連絡を取ったのは、いつだったのですか?」
陽介は首を傾げて、目をきつく閉ざした。いつのことだったか、必死に思い出しているようだ。
「やはり七年前ですね。離婚してからそれまでは、代理人を通してというのはありましたが、直接連絡取ったことはありません」
「それからは?」
「三年前です。それから去年、そして一昨年も会いました。智恵子が観光で台湾に来ていましたので」
陽介は観光という言葉を強調した。
「会おうという連絡は、智恵子さんからですか?」
「そうです。その時もきっぱりと、来たついでに、と言っていました」
でも、来たついでに、にしては、遠すぎる距離ではないか。
「その七年前と三年前に、どうして連絡を取ったのですか?」
「南帆というのは私と智恵子との間に生まれた子どもなのですが、その子が七年前に自殺して、三年前に仮葬儀が行われたからです。彼女もいちおう実の母親ですから」
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