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「ゆきとそなたの傍から離れることなどないというに、捨てるなどありえん」
「うそ。だって、ずっといなかった!」
「あちらの世界ではそなたが一つになるかならないかの時に、ゆき曰く、我のせいでそなたが只人(ただびと)に誘拐されてな」
「ゆうかい!?」
「うむ。それからというもの、視る力を持つ者にしか我の姿は見えぬようにしておいたのだ。他の者と違う故に悲しむやもしれんそなたのことが可哀想だとゆきに頼まれてそなたの視る力も封じた。我としてはゆきに我の姿が見えていればなんの問題もないしな。だから、そなたが分からぬだけで、我はずっと傍にいた」
「……」
お母さんは本当に私に大事なことを色々言っていない。
ほんのちょっとだけ、私の心が動いた。
「そばにいたっていうしょーこはありましゅか?」
「証拠?」
「あい」
「証拠と言われれば……そうだな。そなたが六つの時、社の境内で隠れて犬を飼っていたか。ゆきにそなたの祖母がアレルギーだから飼えんと言われてしょぼくれておった。それから四つだったか、幼いそなたが寝ている間に粗相をして起きた時、あまりにも動揺してゆきに言いだせずにいたものだから、我が庭の池に布団を落としてやったこともあったな。あれは後からゆきに我が怒られた。がっこうなるものに行き始めてからは昼食後の学問の時間に爆睡して教師に怒られていたり、ゆき譲りの俊足で走るので一番をとっておったな。他にも
「すとーっぷ!!」
これ以上はダメだ。
私が忘れている黒歴史も掘り出されかねない。
「どうだ? 我はそなたの傍にいたであろう? 人とは違い、我は嘘はつかん」
「……わたしはあなたきらい、なわけじゃない、かもしれない」
ま、まぁ、少なくとも、小さい頃からくすぶっていた父親への想いはなんとか昇華できた、気がする。
「ならば、呼んでみよ」
「なにを?」
「我を、パパさんと、だ」
「……」
やっぱり、前言撤回、しようかな。
変人が父親は嫌だ。
なんでその呼称に異常にこだわるのさ。
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