私の知らない色

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入社したのは私の方が先だが、他のデザイン事務所から二年前に転籍してきた眞辺の方がキャリアは上だった。 私は主に編集を担当しているが、最近ではこの男と組む仕事が増え、いつの間にかほとんどの仕事に彼と携わるようになっていた。 「やるか……」 彼の手元からカチッとマウスをクリックする小さな音がした。 彼が今から本腰を入れようとしているのは急に変更が入った雑誌の特集記事だった。 明日の朝までに修正案を出さなければならず、彼は今夜、ここで一夜を明かすことになるだろう。 私がいてもできることは雑用くらいで、むしろ彼の仕事の邪魔になりかねない。 この男は適当そうに見えて、 やるときはやる男なのだ。 もちろん、そんなこと、私から口にしたりはしないけど。
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