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葵「人には向き不向きがあります。努力して補えるものならばそうしますが……そうもいかないものがある。わかるでしょう」
真面目な顔をして私を見つめる龍之介さんにそういえば、それでも彼は首を横に振る
何故、この人は…納得しないのか。私には理解ができない
葵「…私は、人を殺すことでしか道を切り開くことができません。そうしなければ、違う誰かを巻き込むからです。そんな私が、誰かを守る為の力を教えることなんて…出来やしないんです」
龍「ちげぇな。お前はそれを言い訳にして、逃げようとしてるだけだ」
葵「…は?」
殺すことしかしてこなかった私に、それ以外の選択肢を養う権利はない
殺さずして倒すとか、そんな甘いことを考えたせいで…罰が下った
殺すことしか許されない私が、誰に、何を教えられる?
まだ幼い子供達に、私と同じ道を歩めと…そんな酷なことが言えるだろうか
ああ、そうだ。私は逃げている
葵「ええ、逃げますよ。性に合わないことをする主義ではありませんし、許されないのならそれで構いません。私がここを出ればいい話です」
龍「出来るのなら、既にしているだろう。だがお前はしなかった」
葵「…何が言いたいんですか」
龍「葵よ、お前は自分をわかっちゃいねぇ」
反抗する気もないと示しているのに、それでも食い下がる龍之介さんに苛立ちを覚える
何が、何をわかってないって?
葵「何がわかるんですか。貴方の尺度で、私を語らないでいただきたいです。話はもういいですから、どうぞお引き取りください」
龍「……」
竹刀を返そうとしない彼に背を向け、新たな竹刀を握りながら突き放すようにそう言った
嫌われるような態度や言葉で、優しかった人々を突き放していく
そうだ、元々こうだったじゃないか
所詮は上っ面だけで、心の中では誰も信用なんてしていない。その方がやりやすかったからだ
人と関わる機会が増えたから…忘れていた。ただそれだけでしょう
未だ感じる彼に背を向けつつ、気にしないそぶりで素振りを始めれば……彼はポツリと、呟いた
龍「お前、臆病だな」
……はい?
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