#9.紳士と不思議なスイッチ

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やあ、諸君。私だ。 爆発音?聞こえんな。 それとはおそらく何の関係もないが、 以前妻にアヤメは毎日深夜4時まで起きて何をしているのか、と訊かれたことがある。 私が腕を2、3本犠牲にして調べたところ、 どうやら防犯カメラを拝借と称してハイジャックするだけでなく、 何やら怪しい道具を作っていることがわかった。 今年の自由研究で作ったダイナマイトをはじめ、防犯ブザー型発火装置やら、ポリカーボネート製ランドセルやら、ど◯でもドアやら、タ◯コプターやら、スモ◯ルライトやら… …ド◯えもん…? そんなアヤえもんがおもむろに机の上に出しっ放しにしていたスイッチを居間に持ってきた。 もちろん、無断で。 "危険!"や"wearing!"と書かれたシールが大量に貼ってある。 これだけ脅しておきながらボタンの部分はむき出しで、 うっかり押してしまいそうである… いや、決して出来心で押したいなどとは思っていないぞ? だがもし万が一、悪気はなくて手が滑ったなら、押してしまうこともあるかもしれないなと思っていただけだ。 違うぞ?今手にサラダ油を塗りたくっているのは、ただちょっと妻のスベスベの頬を散々愛でた後に火を放ちたい気分なだけで… 「おはよー」 ううぇっちょぇぇぇぇいいいいい 「何してるのー?」 いや、スイッチなんて持ってないぞ。 「スイッチ?あーそういえばアヤの部屋にあった"お倒産スイッチ"しらない?」 なんだその夢のないスイッチは… 「それ押したらね、世界中の大企業がランダムで1つつぶれるの!」 ワーオ。原理はわからんが押したい。 「まあアヤが過半数の株を保有してる126社から選ばれるんだけど…」 …ガチなやつか。 うーむ…これを押しても家族の資産が減るだけだな…つまらん。 なあアヤメ、それってあからさまにヤバそうなオーラ出してるやつだよな? 「えーちがうよ。お倒産スイッチはダンボールでできてるヤツ!」 わかった、後で処分しよう。 「ヤバそうなのは確か…"平和スイッチ"!」 ハッハッハ、嘘だな。 「ほんとだよ!それを押したら5分後には、世界中の核兵器がなくなるの!」 ほう…流石は我が娘。 そんなスイッチならさっさと押せばよかった。 ポチッと… 「豪快にね!」 …………え?
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