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「なんなら、泊まっていって。明日車で送って行くから」
強引に鞄を奪われた。そうだった、この人はまったく人の言うことなんか聞かないのだ。
「最悪だ、上司の家に泊まることになるなんて」
心の声が漏れたのか。いや、それは課長の声だった。
「神谷くんの気持ちを代弁してみました。いやね、僕ら君たち世代のことよく分かんないのよ。飲みにも誘いにくいし、からかっても反応ないし。今日は神谷が代表してゆとり世代の考えを聞かせてよ」
「そもそも僕はゆとり世代じゃありませんよ。それ新入社員の話でしょう? 僕の年齢分かってます? 水口課長と八つしか変わりませんよ。それに僕はずっと私立の学校行ってて勉強ばっかりやらされてましたからゆとりどころか青春もろくにありませんでしたよ」
「そうそう、そういう話。神谷、会社じゃぜんぜん自分を見せないだろ? 俺、君に期待してるんだよね。他の奴らと違って、なんか芯がありそう」
会社の人間に褒められると裏があるんじゃないかと深読みしたくなるが、この人はそんな気持ちにさせないのだ。そういうところが人に好かれる理由なんだろうか。
「ほら見て、あそこの角の一戸建て。三年前に買ったの。どう? なかなかのもんでしょ?」
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