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「あっ、でも」と間に挟み、また真澄の口が動き出す。
「決してカジノで大儲けして君の借金を返す、なんて馬鹿な考えをしたわけじゃないから」
「……でも、さっきお金儲けって言いました……よね!?」
「そこは間違いじゃないよ」
もう京介の脳の容量は限度を軽くオーバーしている。
と言うのに真澄と晃は、核心的なことは未だ告げずに自己完結した様子でシートベルトを外す作業に入っている。
カチャリと軽い音が二度鳴った。
シートベルトが外れた音だ。
「よし、行くか」
「いや、行きませんよ!?
せめて説明してくださいよ!」
早々と車を出ようとする晃を必死の表情で制止する京介。
何も分からないままこんな場所に踏み入って堪るか、という訴えが表情から如実に滲み出ている。
非常に鬱陶しそうな視線を向けてくる晃だが、やがて京介の一理を尊重することに決めたのか、窓を開けて煙草を一本加えた。
「……アタシ達は、今からカジノのオーナーを脅しに行くんだよ」
「おっ、脅す……!?」
「ここのオーナーにはな、カジノ経営者とは別にもう一つ、極道の若頭って顔がある」
また一つ、一般人が耳を塞ぎたくなるような単語が出てきた。
しかし京介も今回は横槍を入れること無く黙って言葉に集中する。
フゥーっと煙を大きく吐き出し、晃は言葉を続けた。
「まぁ、中身省いて簡単に言えば……『金貸し』もやってんだよ、その若頭は。
それも結構な高利貸しだ」
京介が晃の言葉を割って驚嘆の声を洩らしたのは、この時だ。
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