40、その手を絶対に離さない。(英輔)

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決して広くもない駐車場に車が数台残されていて、そこにひと気はなかった。 こちらに顔を見せようとしない加賀原に向かってどう声をかけるべきか迷った。 訊きたいことは山ほどあるはずだ。しかしそれはこちらも同じこと。 何か話しかけようとしたら加賀原が先に口を開いた。 「認めねえ」 低く絞り出すような声は震えていた。 どういうことだ、と言おうとしたがこちらに発言をする機会を与えてはくれなかった。 「どういう経緯でそうなったのか知らないが、あんたに上山と付き合う資格はねえ!」 彼の声は駐車場によく響きわたる。 相当怒り狂っているようだが、こちらも黙っているわけにはいかない。 「資格はない、などとお前に言われる筋合いはない」 こちらは冷静に淡々と思ったことを伝えた。しかし彼は気にくわなかったようでさらに声を荒らげた。 「俺はあんたの知らないところであいつがどれだけ泣いていたか知ってる!」 加賀原の叫ぶような声に通りかかった人が不審な顔でこちらを見ていった。
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