遥人の結婚式 ―千夜一夜の物語―

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「だからね。  少しくらいご褒美があってもいいと思うんですよ。  この動きの遅いカピバラが貴方のために駆け回ったんですから。  お父さんに下げたくない頭まで下げて」  遥人は一瞬、目をそらしたあとで、那智の手をつかんだまま、真正面から見つめ直して言った。 「俺にはお前だけだ。  結婚してくれ」  そのまま遥人が離さないでいる手を見下ろし、 「これでいいかって、今日は言わないんですね」 と言ってやる。  もう勘弁してくれ、という顔を遥人はしていた。  だが、彼は俯いたあとで、ふっと笑う。 「……信じられないな、と思うんだ」 「なにがですか?」
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