人間椅子

まずは有り得ないけれどそれほど重くはない奇妙な逆転世界から入る物語は、始めのうちさほど期待ありません。 しかし、読み進めるうちにやがてテーマとなる題材が垣間見え始めてきます。 扱われている題材が重くないので、このテーマが不自然なほどギャップを感じさせるのですが、もう少し読み進めましょう。 すると、変にリアリティを感じる大人の行動と、やはり有り得ないような中学生の行動が交錯します。 そして、核心たる有り得ない組織が登場するのですが、有り得ない組織なのに現実に有り得ることばかりを語るから、このギャップによって物語に織り込まれたメッセージが浮き彫りになることでしょう。 さらにラストには…。 個人的には面白い面白くない以前に、よく出来た物語だと思いました。 きっとこれは、主人公の目線がイコールで読者の目線になるよう構成されているのだと思います。 だから、とくに年代によって先へ進むか止めるかが違ってくるとは思います。 しかしながら、静かなるファシズムというテーマは、非常に社会的であり、これが語られる後半にはグッと引き付けられました。 私もそう考えています。 世の中に真の悪なんてないんです。 また存在するなら倒すことができるし、やがては消滅するのにどうしてファシズムは形を変えてどんな主義の社会にも時代にも存在するのか? その答えがコレなんです。
2件

この投稿に対するコメントはありません