夏月 海桜

本編の主人公・黒川悠一と伸一兄弟の父である黒川俊夫の話である本作品は、一言で言うと愛に溢れた作品だ、と断言出来る。夫婦愛と親子愛。特に魔王と息子達に称される程の父の姿が、実はそう呼ばれる事こそ本望。だったなんて、納得すると同時に深い愛を知った。ただの上っ面だけを見繕った家族関係……親子関係などでは決して見る事の出来ない、愛。本作品は、愛を感じさせるとしか説明出来ないくらい、愛に溢れている。父親とは、こうあるべきだ。とは言えない。いや、言う事は出来ない。何故なら、こんな父親は、黒川俊夫以外、無理だから。その意思を2人の息子達も継いでいるだろうが、彼らなりの愛情表現で、我が子を育て上げていくだろう。しかし、黒川俊夫のような愛情表現を使う事は出来ないだろう。何故なら、黒川俊夫では無いから。唯一無二の存在である魔王。彼の存在全てが、愛で出来ていたとは……。本作品は、書かれるべきタイミングで書かれたのだ、と思う。本編を知っている読者が、本編完結後に黒川俊夫視点の話を読む事で、作品の世界観をより深く理解出来る。愛を、命を、繋げていく、という事の意味を本作品でまた少し勉強出来た。深い愛に溢れた作品に敬礼。
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