tomohiro

まず、設定を飲み込めたとき、「お!」となりました。 人の形のセミ、という奇妙な存在が出てきます。 このあたりの設定からすると、SFやライトノベルが好きな方はお好みかも知れません。 で、話が進むうちに 一般的なセミが持つ、その寿命から来る「命」のはかなさのイメージが、 人の形をすることによって一層強くなってきて、 しかも セミの命を奪う=自分を生かす 形のスジの運びになったことで、 人の形であることによる「人間が生きるために他の命を奪っている」罪深さが強調される。 お見事な手腕だな、と。 この作者さんの、テーマをバッチリ体現する設定の妙に感嘆してください。 で、その「命」に通じる意味合いでの、性の扱いについての感想も。 当初はエロスな意味で読めた交わり。 後の場面では同じことなのに意味が変わってきます。 設定のなせる技ではありますが、ダブルミーニングに喜べる展開になってます。 こういうの、読者としては嬉しいんですよね。 最初は登場人物の男の情欲が素直に出ているシーンなので、 下ネタが苦手だと眉をひそめてしまうかも知れません。 そこまでキツい描写なわけではないので、心配しすぎかも、ですが。 良くなかったかな、と思う点ですが 後半、やや早足になった印象。 せっかくのクライマックスなのにスイスイ進みすぎかな、と。 ストーリーを追っかけることばかりで、味わう暇が少ない感じでした。 もう一点。 主人公の出自、過去、の謎解きと、 セミ組織との対立、 二つのバランスが良くないかな、と思いました。 読んでいるときの感情としては、セミ組織とのストーリーに入り込んでいたので、主人公が実は… みたいなところが、ともすれば異音かも、と思わなくもありませんでした。 テーマ的に表裏一体だったり対立事項だったりすれば並立させる意味もあるのでしょうが、個人的な意見としては、絞ったほうが、と…。 全体としては、良いデキの作品であると思います。 読んでみてガッカリすることは無いですよ!
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