第3回ノベリスタ大賞最終候補選出作品の中でも、最も異彩を放つのが今作品 『Murcielago~640万馬力の女』ではないでしょうか。  まず、マシンのディテールが完璧であり、これは小説を書く上で必要な《その世界観を熟知している》という条件を見事に満たしています。  イタリア・ミラノという土地柄(その情景のみならず、地形的な特徴)を完璧に生かし、カーマニアが泣いて喜ぶような臨場感溢れるレースを展開させて行く。……作中のミシュランのタイヤが軋む音や、エキゾーストノートの振動すら伝わって来る魅力が詰め込まれています。  個人的に、アメリカンモータースの名車や、フォード・ムスタング(中でも1970年代初期のマッハ1)、そしてランボルギーニ・カウンタックといった往年のクラシック・カーも、それらの流れを汲む現行車にも深い愛着があるので、この物語に出会えたことは最高の喜びです。  欧米の車と、日本の機動性を重視しつつも、コンパクトにまとめられた大衆車の間の差異にはいくつもの違いがありますので、そういった部分も意識しつつ読んでいると、顔がほころんでしまいます。  それぞれのキャラクターとマシン。この組み合わせ方・セレクトのセンスも嬉しいですね。  僕が以前読んだ、石井敏弘さんの「風のターン・ロード」(これはカワサキのZ2が活躍するオートバイものでしたが)にも通じる感動を与えてくれました。  映像化して欲しい、そしてその時には《松任谷正隆氏》に特別出演してもらいたいと夢想しています(何のことか、作者・ぬまざわさんには分かってもらえると思いますが。笑)  応援して行きたい! と心から思えるシリーズです。
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