空音

私は正直、ホラーが嫌いです。 大嫌いです。 お化け屋敷は入れませんし、友人の心霊体験談には耳を押さえて「アー!!!アー!!!」と叫びますし、丑三つ時に目が覚めてしまったらトイレに行くことさえできません、呪いのビデオなんかおぞましくて目を開けません、シャンプーをしている最中にもしも幽霊に襲われたらどうしようと身構えます、夜は遠回りしてでも墓場の前は通りません。 誰よりもホラーが苦手で、怖くて、泣き叫びたくなる私です。 こんな見るからに怖そうな作品集なんて、こわすぎます。 目を開かなければ進めることのできないという物語の形式を取っているのです。目を背けることはできません。そして文字で書かれた作品ゆえに、映像作品以上の不気味さが、頭の中に描かれて、気づけば暗闇の中にいるような、寒々とした気分に陥るでしょう。 さらに、“百”物語です。どれだけ心臓があったら足りるのでしょうか。 ああ、表紙のイラストからすでに怖いです。 作品の説明には何やら「どうかあなたのそばに怪異がありますように。」だなんて書かれていますが、もしかしてこれを読むことでおそろしい何かが起こるのでしょうか。 いったい、どうなると言うのです。 ただ、おそろしさは時として好奇心をくすぐるものです。 ああ、なんだってこんな作品集を作ってくれやがったんでしょう。 私の指は、自然と、伸びていきます。 【この作品を読む】 開いてしまいました。 読んだら寝られなくなると決まっているのに。 読んだら読み進めてしまうと決まっているのに。 ああもう、これだからホラーは嫌いなんです。 「こわいこわい……ああこわい……こわいんだけど……でも……」 そう言いながら、私は読む。 作者たちを恨むと共に、感謝している私がそこにはいました。 ――2014年8月16日 部屋の明かりを消しながら。
10件・1件
素敵なレビューありがとうございます! 僕のイチオシは「芽吹く森」です☆ 怪奇あり笑いあり涙あり……そしてそれだけでなく、読む者の魂を打つ作品。 ご参加ありがとうございました!!!
1件

/1ページ

1件