夏月 海桜

読了しました。 渤海。かつて有った国の名。滅びた国。その滅びた国に建国された国が有った。その国に一人の男あり。彼は、知略に満ちた人だが、その境遇ゆえに、人を信じる事がなかなか出来ない男でもあった。 主人公である彼は、強烈な個性を持つ。読者は賛否両論だろうが、個人的にはこういう人物がいることに、リアリティーを見る。彼は、性格が人を喰っていて、笑顔を浮かべながら人を裏切る。だが、その知略を余す事なく使う性格はかなり好きだ。 このような人物は、平穏な世の中では生き難い。乱世であるがゆえに活躍出来る。国という大きなものを背負い、舵を取るために使えるものは何でも使う。危険な考え方。だから、政敵も多い。それゆえに彼は投獄もされてしまう。 だが、国と、自らが認めた主のために自分の幸せなど顧みずに突き進む姿は、いっそ天晴れ。そして、そんな男を愛し、そんな男に愛された女もまた、尋常ならざる人。 正直。歴史小説ではあるし、ドラマのようでもある本作品は、読みごたえたっぷりで、中国の歴史が好きな人にはかかせない、とお薦めする。 しかしながら、本作品は、一人の男性……それが主人公の彼なのだが、その主人公の生涯を書き記した大作である。なんという人間ドラマ。人間描写。人間を懇切丁寧に描いている。これは、知識をしっかり持った人ではないと書けるものでは無い。 ラストもいかにも彼らしい、と思ってしまった。最初から最後まで突っ走った男。その生涯と、歴史を知りたい方は、ぜひ読まれるべきだろう。
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短時間で一気に読んで頂いてしまったようで、すみません! そして、最後までお付き合い下さり、ありがとうございました! m(__)m なかなか読者の付かない作品。読んで頂けただけでも幸せです。まして、レビューまで頂けるなんて!! これは渤海の跡地を舞台にしていますが、描きたかったのは悲恋です。そうなんです。人間を描きたかったんです。だから、レビューで言って下さったことは、とてもとても嬉しいです。 大変心のこもったご丁寧なお言葉に、心より御礼申し上げます。

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