灼眼のシャケ

ほんのりとした重みで目が覚める。 「いつまで寝てるのー?」 元気のいい声が響いて 俺の上に乗った重みが上下に飛び跳ねた。 その勢いは大したことはないが 俺の腹を抑えた小さなものが 俺の腸から胃へと何かを逆流させるような刺激だ。 「うごっふ……!」 「おきてー、おきてー」 部屋に差し込む朝日が 俺の上に跨ったシルエットを映す。 メリハリもない同い年にしては発育不良 頭についた二本のしっぽが彼女の特徴 依然としてそれが上下にひょこひょこと。 相変わらず俺の腸を押して 胃に何かを返そうとする彼女に 俺は精一杯の力で抵抗して起き上がる。 「人の上でなにやってんだ、この馬鹿!」 「起きてくれないからぁ……」 少しぶーたれた顔をして見せる。 ふくれっ面の空気を両手で挟んで萎ませて 俺はもう一度問いかける。 「人の上で何してんだ」 「朝のパパと娘のー……」 だんだんと歯切れは悪くなる。 俺がそこまでで納得するように 「えーと」なんて言葉を挟んで間を繋ぐ。 俺はただそれをじっと睨んで見つめる。 「イケナイカンケイ?」 俺は思い切り立ち上がって彼女を跳ね飛ばした。 小さな体に軽い体重。 彼女は予想よりも大きくベッドでバウンドし すこし乱れた髪を手櫛で整えた。 「アンタ達、朝っぱらから何やってるのよ!」 ドアを蹴破る勢いで開けたのは 黒い髪をロングをひとつに結び 凛とした目つきの発育良好。 「あー、ちょっと遅かったかぁ  上に乗って致してるところでキャー、の予定だったんだけど」 どこで計算間違えたかな。とでも言いたげに 顎に手を当てて考えるツインテール。 こんな朝っぱらから何をやっているのやら。 「ほら、遅刻も遅刻。大遅刻よ!」 発育良好な胸の下で腕を組んで 彼女は時計を指さした。 やばい、寝過ごした! 俺は立ち上がって制服に手を伸ばす。 しかし、その手は小さな手で掴まれた。 「ね、どうせ遅刻ならテイク2  イっちゃおうよ、ね!」 「だから、遅刻するって言ってるでしょ」 朝は騒がしい。 いつだって騒がしい。 テイク1でも2でも、騒がしいのは こいつらのせいなのか、俺のせいなのか。 どちらでもいいけれど また朝は始まろうとしていた。
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あれ?なんか過去の作品で見たキャラと被ってるような、、、?

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