現代に蘇りし北欧神話、氷の世界と現実世界のスイッチングを、多方面から描いた作品です。  ニブルヘイムはどちらかと言えば、日本人にもよく知られた題材なのですが、そのテーマの深淵さを、メタフィクション的描写によって読ませてくれる技法に、特に10ページ以降に《似つかわしくない》アイテムを敢えて投入してみせることで、読者を「あっ!?」と言わせるのは素晴らしいの一言に尽きます。 (具体的に書くとネタバレなので控えますが)  渡りながら、その凍った足跡を眺めるという行為は、北欧ならずとも東洋の文言 「地上に元々道はない。皆が渡ればそれは道となるのだ」  そういった観念にも通じるものがありますし、これをキッカケとして北欧神話の世界を探究するのも素敵だと思います。  先日、こにし桂奈さんの作品を読ませてもらった際にも心を動かされたのですが、巴世里さんの見事な世界観を紡ぎ出す「絵師」様としての能力と、小説家の才能が高次元で結び付いた、そんなお話でした。
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