美森 萠

(応援)恋愛小説において、ヒロインが恋愛を通して成長する姿を描くのは一つのパターンではありますが、本作が他と違うのは、作品の中で、ヒロインとヒーロー、二人の成長過程を描いているという点ではないでしょうか。 相手のある人との恋愛に苦しみつつも、その恋愛から逃れられずにいる美優と、決められたレールに乗るのが嫌で家を飛び出し、自由気ままに生きるポチ(本作未読の方のために、あえてここはこの名前で)。 美優は、恋愛で疲弊した心を癒すために、ポチは当面の衣食住を得るために、互いを『利用』します。ポチが本当の名前を名乗らないのも、そんな彼を美優があえてポチと呼ぶのも、互いに深入りしないため。ペット同様の名前は、二人が暗黙のうちに決めた『境界線』でもあります。 頑なだった美優がポチに助けを求めたとき、そしてポチが本当の名前を美優に明かしたとき、ようやく二人の恋は動き出します。 そして、恋が二人を成長させた。 優しい性格ゆえに、肝心なところで相手に流されていた美優ははっきりと自分の意志を口に出すことができるようになり、また、これまで家族や自分の運命から逃げてばかりいたポチも、美優を守るためにそれに立ち向かい、窮地に陥った美優を見事救い出します。 恋をして、だんだん強くなっていく。 恋愛はただ甘いだけじゃなく、人をこんなにも成長させるものなのだと実感することができる。他にはない、読み返すたびに最後まで一息に読んでしまう、とても素敵な恋愛小説だと思います。
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美森様 隅々まで読み込んでくださったのだろうなという、とても丁寧なレビューに嬉しくなりました。 美森様はいつも私の表現しきれなかったと反省してしまう拙い部分まで、敏感に読み取ってくださっていて、ただただ感服致します。 ただ美優が救い出されるシンデレラストーリーというだけではなく、美優が恋をして強くなり、それを目の当たりにした頼りないポチが人として成長する。 互いが互いのために強くなった……伝えたかったその部分に、私の拙い表現からでも拾って気が付いてくださって本当に嬉しいです。 素敵なレビューをありがとうございます!
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