紗綾

図書館記念日、其の弐(2016・04・30) ………いない? 嘘でしょ、まさか、どうして?? 他の窓際の席は空いているのに。 彼の指定席だけが埋まっているのはいつものことなのに。 違うのは、彼ではない違う誰かがそこに座っているということだけ。 それじゃ、彼は一体どこにいるというのだろう。 周りを見回してみても、どこにも彼の姿は見当たらない。 メタルフレームの眼鏡をかけた彼を探し回る。 もしかしたら読みたい本を探すのに夢中になっているのかもしれない。 彼が読みそうな本のある場所を見て回るけど、いない。 もしかしたらトイレに行ってるのかも……いない。 子供の頃に読んだ懐かしい絵本を探しに行ったのかも………いない。 彼ももしかしたら私を探し回ってウロウロしてるのかも? しばらく窓際の別の場所で座って待ってみたけど…………来ない。 この図書館って迷子の呼び出しとかしてもらえるのかしら? そんなことを真剣に考え始めた所で、私の携帯が鳴りだしてしまった。 慌てて通話OKエリアに移動してから電話に出た。 「……もしもし?」 『おい、いま何時だと思ってる?』 彼からだった。 物凄く不機嫌丸出しの声が響いてきた。 「10:31ですね。先輩、どこにいるんですか?」 『どこって、県立図書館だけど?そう言うお前はどこにいるんだ』 「え?市立図書館ですけど?」 『さては俺が昨夜送ったメール、見てないんだな。この俺に待ちぼうけ食らわすとは……。いい度胸してるじゃねーか』 …………メール? はっ!! お風呂に入る前にメール来て、お風呂上がってからゆっくり確認しようと思ってたのに。 お風呂で眠くなってしまって、上がったら速攻で寝ちゃったんだった。 『俺、お前のことを"世界の終り"が来るまでずっと待ってるから。あ、ついでにコッチに来る途中に約束のDVDを借りてきてくれ。なんのDVDかって?それは昨日のメール見れば分かるだろ。永遠に待ってるからな』 ………あーあ。 あのクールなメタルフレームがキランと光った所を妄想してしまった。 早速昨日のメールを確認した私は、県立図書館へ向かう途中のレンタルショップで"図書館戦争"のDVDを借りる。 急がなきゃ!だって今日は、図書館デートなのだから。 END 図書館記念日、バンザイ!!
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