藤白 圭

鬼才の演出家。 その迫力たるや凄まじく、彼女の要求に応えるべく、皆、必死となり、それがいつの間にか、演技そのものへと……そして、役柄そのものへとなり切っていく。 その過程の描写が綿密かつ精細であり、とても引き込まれました。 鏡に向かって「お前は誰だ」と言い続けると、ゲシュタルト崩壊が起きるが、鏡に向かって常に、「役」になりきった演技をした彼は、きっと、「役」そのものに洗脳されてしまったのだろう。 己自身で知らぬうちにかけられる洗脳。 役者としては、最高の状態、舞台という最高の場所で魂をも燃えつくした彼の「演技」であり、「彼」の人生そのもの。 その一瞬だけの、真っ赤でありながらも、どこか仄暗さを感じさせる不気味な炎を文章からリアルに感じたような気がしました。 興味深い作品をありがとうございました。
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