北沢あたる

高級ホテルを舞台に展開するレストランに、偶然居合わせた3組が織りなす奇跡の物語。それぞれのテーブルの乾杯から始まり、回想を経て、3組が融合していきます。 私が好きなのは定年を迎えた救命士夫婦で、娘達の招待で食事を楽しんでいるのですが、終始穏やかで2人のお互いを思い合っている雰囲気が伝わり、ほっこりしました。 あとがきに「ウソのような偶然が折り重なるつながりが書きたかった」とありますが、物語が進むに連れて、「え?ここも繋がってるの?」と思うような怒涛の偶然が押し寄せて来ます。人それぞれに様々な事情はあるけれど、家族って大事だよね。お互い想い合うって素敵だよね。そんなメッセージを感じました。 物語の舞台であるレストラン内の様子、スポットの当たる3組を中心とした周りのお客さん達の様子(私はなぜか熟女グループが気になりました笑)、一見華やかな場所での楽しそうな時間に見えるけれど、3組が抱える事情、登場人物の背景や次々と解明されていく真実、細かく設定されていて、プロット派けいさんの作業が垣間見えました。 読み終えた感想で気になった所を少々。里桜ちゃんのお父さん、昌さんが20歳になったら子供達を追い出すのはなぜだろう?と思って読んでいたのですが、しかも、本当の子供じゃないと残酷な事実を告げて。これは「かわいい子には旅をさせよ」という不器用な父親なりの愛情表現だったのでしょうか? 個人的に里桜ちゃんにはもっと激しい感情の波があっても良かったと思います。20年ぶりに突然目の前に現れた父親に、(例え自分がファンのギタリストだったとしても)素直に微笑むことが出来るだろうか?ドローン襲撃事件でパニックになった後でもあるし。 読み手としては、里桜ちゃんと離れなければならなかった唯人さんや遥さんの事情も分かりますが、里桜ちゃんは知らないはず……もっと憤慨して行き場のない思いを当たり散らしたり、泣いたりしてもいいのでは?と思いました。生意気にすみませんm(__)m ラストは血の繋がりはないけれど、大切だと思える家族を再確認し、前を向いて歩く里桜ちゃんに、今君は人生の大きな大きな舞台に立ち、遥か長い道のりを歩き始めた君に幸せあれ!乾杯!とエールを送りたくなるような、清々しいハッピーエンドでした。昌さんを騙して自宅をシェアハウスとする件も可愛らしかったです。(最後はナガブチでしめてみました(^-^))
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北沢あたるさん、もの凄く感動的なレビューをありがとうございます! 嬉しいところ、痛いところ、アタタタと突かれまくっております(^^;) お。あたるさんから救命士夫婦とは意外。熟女は期待通り^^ メッセージをそのように受け取ってくださって嬉しいです。ウソのようにとしたのは、実はウソではないかもしれない、という思いも込めて。創作物語はそれ自体ウソかもしれないけど、ホントかもしれない、そんな錯覚があっても良いかなと思うこともあります。いや、物語として目の前で展開されている限り、ホントなんだよね。と思う。 プロット作業は本文と同時進行で大変でした。終盤は脳内プロットのみで本文先行。なので、原稿は完
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石田さんの言う所のリアリズムですね? 昌さんが子供たちを追い出す理由は、亡くなったお母さんが絡んでいるのですね。なるほど。奥さんとの約束を守ることで、奥さんへの愛も証明しているのですね。 それならば、昌さんが、里桜ちゃんを含めた子供たちと真実を話すシーンがあっても良かったかもしれません。無口な親父が鼻水垂らして、「お前たちを愛してるっ!でもこれは約束だったんだ……」と泣きながら真実を告げるシーン……グッと引き込まれるし、昌さんの好感度、グッとアップするのではないでしょうか? けいさんとは、直接会って、普段友達の間では言えないような、小説制作について話合ったり、カラオケ行ったり、本当に楽しか
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