世つめぐ

主人公はいる。 けれど、これは群像劇というべき範疇のものだろう。 人の行動と感情の中に、「自分に優しすぎる」主人公が放り込まれ、 物語を作っていく。 クラスメイトの女子に対して「頭のしわを数えたくなるような」など、秀逸で引き込む表現なども面白い。 等身大の学生の姿を感じる。 主人公を追体験するこの感覚の中で、読者が感じるものは多々はあると思う。 ただ、それによって、主人公が読者に嫌われてしまう可能性に、私は懸念を感じる。 いい意味でも悪い意味でも評価の難しい小説というのが、もっとも正直な感想である。 この物語の世界観の理解は、読み手にゆだねられる部分が多いので、ぜひ多くの人に読んでいただきたい。
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