あーる

『八月三日』 真夏を感じつつ儚げな印象の表紙とともに、意味深長でいて潔いタイトル。 まずそこに強く心惹きつけられました。 その日、白崎和人という男性の身に起こった出来事から紡ぎだされる、温かく優しい想いと奇跡の物語。 事故により記憶障害を負った白崎さん。元看護師で白崎さんの担当になった介護士の一ノ瀬さん。 記憶がリセットされてしまうという過酷な状況の中、果てない絶望と苦悩の毎日を二人が共に重ねていく姿。そして、その日々から生まれた信頼関係と深く強い絆、その奥に芽生えたお互いを大切に想う気持ちに、温かくて優しい涙が溢れて止まりませんでした。 一ノ瀬さんが初めて一人で白崎さんを担当することになった朝の情景。 ひとつひとつの描写から漂ってくる緊張感と慈しみの空気。透明感のある情景に一ノ瀬さんと一緒に思わず息を呑んでいました。 高校生の白崎さんの実家の風景、施設の庭の景色や料理…どのシーンをとってもその空間に流れる空気や温度、匂いまで感じられるような繊細な描写にも物語に引き込まれていきます。 そして白崎さん。 白崎さんは一人の人物ながら、何人もの「白崎さん」を感じます。それは、記憶がリセットされてしまうが故…前向きな日。酷く混乱する日。投げやりな日。悟る日。『日記』の中では「自分たち」に語りかけていますものね。 記憶がリセットされた時、一日たりとも同じ白崎さんはいない。そこを丁寧に描くことによって「白崎和人」という人物に奥行きが生まれリアルに生きていると感じられるのだと思いました。 泣き虫で優しい一ノ瀬さんは、白崎さんの心からの笑顔を願い求めて『タイムスリップ』という奇跡の離れ技を繰り出します。 でも、それは単なる奇跡ではなく、今日をしっかり生きていたからこそ…葛藤し悩みもがいた毎日の積み重ねがあったからこそ起こったものと思える…そして、この奇跡あったからこそ、高校生の二人の未来が白崎さんと一ノ瀬さんが願った未来となる。 強く深い信頼と愛情の心の繋がり、過去があって今、未来があるという時間の繋がり、家族や関わる人皆が人を思いやる繋がり…さまざまな繋がりが一本の流れとなり、読み終わりには深い幸せを感じました。 激しく胸を打ち、心揺さぶられるお話。生きていくということを力強く感じることができます。BLという枠を越え、卓抜したセンスを感じる作品…とてもとても素敵なお話です!
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あーるさん素敵なレビューをありがとうございます!!! 感激して二度三度と読み返しましたぁぁ。(´Д⊂ 「ちょっと不思議なお話を作りたい」という所から、このお話はスタートしました。ライトノベルでは転生したり魔法使いになったりするけど、そういうのではなくて「奇跡」すら説得力があるお話を書きたかったのです。奇跡は「信じられないラッキーなハプニング」ではなくて、あーるさんのおっしゃる通り、積み重ねてきた想いの深さ、強さ、その結果だと感じて欲しかった。 「単なる奇跡ではなく、今日をしっかり生きていたからこそ…葛藤し悩みもがいた毎日の積み重ねがあったからこそ起こったものと思える」 なのでこの一文、とても
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たろまろさん、おはようございます(^-^) お返事ありがとうございました! 書きたいこと、伝えたいことがあり過ぎたのと、どの言葉で伝えたらきちんと伝わるかと試行錯誤していたので、たろまろさんの修行タイム(笑)を長引かせてしまいました(T▽T)ww よかった!作者さまの伝えたいことをちゃんと受け取れてて! というより、ちゃんと伝えられる『チカラ』を持ってらっしゃるおふたりが素晴らしいんです!! 本編は、過去→現在→過去→現在とお話は進みますが、その流れが本当に自然で、ツナギ目のボコっを全く感じない構成にも感服です。 過去パート、高校生のふたりもとても素敵ですよね。 あんな泣き虫で前向きで
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