Kohaku.Nao

「やれやれ、君も物好きだねえ。そんなガラクタ/_novel_view?w=21198046にどんな価値を見てるんだい?」 彼はそう言ってパイプをふかす。ここは彼のアトリエだ。棚には彼の作った駄作がずらりと並んでいる。 彼女が見ていたのは彼の処女作。彼がふと思い立って適当に絵の具をこねくり回して書き始めた抽象的な作品だ。そこに確たるコンセプトがあったのか、もはや定かではないが、かけた時間の割には出来が悪いと言って彼はアトリエの棚の一番高いところに置いたものだ。 彼女は少しムッとした様子で振り向くと口を開いた。 「あなたはどうしてこれを駄作というのかしら?これはあなたの作品の中でも一番多くの人に見られていたじゃない?」 「それは僕が大衆の面前で恥知らずにも大きな声で客引きしながら描いた作品だからだよ。 技術がついた今、それはもはや記憶からも消し去りたい駄作さ。だから今こうして一から作り直している。」 「今の作品/_novel_view?w=23655093ね。でもそれはこれをモデルにしてるのでしょう?」 「ああそうだね。今の作品はそいつをモチーフにして今の僕を表現してる、自信作だ。 でもそのせいで今の作品よりそっちを見るものがいる。だから僕はそいつをいつか捨てようと思っていた。」 「でも、きっとこれはあなたの本当の心を映したものよ。それを捨てるなんて…。」 「僕は、過去の自分が許せないのさ。」 彼は立ち上がり、棚からそれを降ろすと、数多の失敗作の眠るゴミ箱に放り込もうとした。 彼女は… イイネ)何か言いたげな顔でその様子を眺めるのであった。 コメント)彼の手を掴んでそれを奪い取ると棚の隅に、そっと置いたのだった。

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