清瀬 美月

無彩色に覆われた『ルキオラ』の世界。 その中で唯一眩しさのあった水芭蕉の白が、濁らせるという表現によって、徐々に彩度を落としていくかのようで、息が苦しくなるような切なさを覚えました。 自問自答を繰り返しながらも、答えが見つからない。 光に溢れている時には、曇り空だって美しい空の色だったのでしょう。 汚泥に沈んでしまいそうになりながらも、辛うじてそこに留まっているような状況。 心と比例しているかのようで苦しくなりました。 そして、すーっとその情景が目の前に広がったような気がした『Noctiluca』 夏を感じさせる描写なのに、あまり火照る暑さを感じません。 少しばかりの湿度と夜の闇に浮遊する光が、これから先もずっと記憶となって残るのでしょう。 どの描写も想像力を掻き立てられ、私はこの作品が一番好きだなと思いました。 誰かに届いてほしくて、でもその誰かって誰でもいいわけじゃない。 今はSNSなどを通じて誰とでも気軽に繋がれるようになったけれど、本当に繋がってほしい人とは術がなんて、余計に切なさが募りますね。 術があったとしても、きっかけがないとなかなか一歩踏み出す勇気はもてないしなあ。 静かに明滅を繰り返しながら、そのまま消えてしまいそうで、儚い恋心にきゅんとしました。 この詩集の世界観の余韻にいつまでも浸れるような、タイトルもまた素敵でした。 それとこれは私が勝手に嬉しかったことなのですが、今回のテーマが『蛍』と決まった時、『水芭蕉』という言葉をどこかに絡められないかなと考えていたんですね。 私には繋がりを持たせることは出来ませんでしたが、怜琉さんの作品に『水芭蕉』の文字を見つけて嬉しくなってしまいました。 怜琉さん、『女詩会』に興味を持っていただき、とても嬉しかったです。 素敵な作品をありがとうございました。 心からの感謝をこめて。

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