青木ぬかり

 お互いを想う兄弟の物語です。  そして、作品全体を通じてやさしく描かれています。  まず読者を惹き付ける導入、それは小説の大きな課題ですよね。  その点において本作は、成長の過程で誰しもが経験する当たり前のことがらを描くきつつ読み手に「世界観」を理解させる優れた導入で、スッと物語の世界に入っていくことができます。  幼少期を経て少年時代を過ぎ、そして大人になっていく兄弟……。  その絆を、ウィットに富んだ味わいで綴った清々しい物語です。  本作はシリーズもの……。本編たる作品に登場する人物を掘り下げたという位置付けにある作品ですが、著者さまが描く作品はいずれも、それ単独で大きなメッセージを持つ「完結した物語」になっています。  すでにいつくか著者さまの作に触れましたが、ハードでスピード感のある刺激的な世界を描く著者さまの中ではめずらしい作品……。  もしかしたら、著者さまの世界に初めて触れるのに、もしかしたら本作が最適かもしれませんね。

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