うたうもの

夏目漱石は、ある言葉を「月が綺麗ですね。」と訳した。 人が月を綺麗だと思い、横に並ぶ者に対して、「月が綺麗」だと言葉を発するのには、とても一言では言い切れぬほどの、複雑な心情と環境の変化があったことが予想される。 そういった裏の背景をも含め、夏目漱石はある言葉を「月が綺麗ですね。」と訳したのだろう。 さて、そのように複雑な心情と環境の変化を体験しているふたりの人間(一方は、環境の変化が非常にゆるやかすぎるという環境の変化を体験しているのかもしれないが)が、月を眺め、互いにその月の不思議さを共有したとき、そこには夏目漱石の訳のような、二人だけの絶妙な心の行き交いがあったのだろう。 その心の行き交いによって、一方は過去の傷をいやし、一方は未来の扉を切り開くことができた。 しかし、それからの現在はといえば、ふたつの月が交わることはなくなった。 それでも、片方は地球からは見えぬ暗がりのほうに転じてしまっても、半分かけた月同士はお互いを信じ合って、これからも闇夜を照らして生きていくのだろう。
1件・4件
うわぁ、素晴らしいレビューをありがとうございます( ;∀;) レビューが小説みたい。すごい。 夏目漱石の小説にも月のシーンありましたよね。なんだっけ、昔、何作か読んだけど、どれかよく覚えてないです(;・∀・) レビューはもちろんだけど、うたさんに読んで貰えたのがすごい嬉しかったです。 ありがとうございましたm(_ _)m
3件
いえいえ、とてもステキな物語でした♪ 夏目漱石というとやはり月を思い浮かべますね! こころにも月の描写があったかな? R18じゃなかったら読めます←w
2件

/1ページ

1件