Maro(お休み中)

楽しく『探偵加藤三郎』拝読させて頂きました。 殺人事件を解決する為、奔走する私と加藤探偵の姿がみごとに描かれていて素晴しい小説です。町並から人々の息遣い、空気や風までも昭和初期にしてしまう作者の手腕は見事という言葉以外思い浮かびません。謎を解く加藤の推理力と行動力により、殺人事件は一歩ずつ犯人へと近づきます。光子が登場し事件は核心へと近づきますが、その光子の正体は? と常に飽きさせぬ細工を用意し、読者に早く次のページを読みたいと思わす手腕は流石です。 そして犯人として刑に服する小達の、倭文子夫人に対する思いは実に切なく哀しく、読者の心に滲みこみました。 時代に合った漢字のルビ、これだけで昭和初期の匂いをプンプン感じます。くわえて警察官の私の名が最後まで分らないのが実にいい。まるで刑事コロンボに出て来る『うちのかみさん』を思い起こさせてくれました。(私は大のコロンボファンです。どうでもいいことですが)そして、光子が正式に加藤探偵事務所で働くことになったのは読者として喜ばしいことです。次の事件は加藤と光子のコンビが難事件を解決する伏線ではあるまいか? 警察官である私が加藤と光子に翻弄されながら事件を解決する伏線なのではと勝手に想像を膨らませております。 日曜の昼下がり、まったりとした時間の流れる中、ビールを飲みながら『帰って来た探偵加藤三郎』を読んでいる自分の姿を思い浮かべております。 最後に、「この世は案外単純なものなのだ。人の行動原理とは愛情と憎しみ。それに尽きる」と言った加藤の言葉に乾杯!
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