さくさく読める和風ファンタジー。長い文章が苦手な方には心置きなくお薦めです。 簡潔な文章の中に散りばめられた滑らかな表現力には目を見張ります。ストーリーも王道の類ですが相当な深さに仕上がる予感を感じます。まだ序盤か、中盤に差し掛かるところでしょうか。読み進むうちに謎が深まり、まだ語られぬ脇役たちの意図思惑が何なのか、今後の展開が楽しみです。 私が気になったのは、キャラクターと演出力、それから描写力と表現力を少し。 描写・表現力に関して。今のままでも問題無く楽しめるレベルだと思いますが、もうひといき工夫を凝らすことで、更なる風情と躍動感が望めると思います。まずは情景描写をもっと細密に加えてみると良いでしょう。今より更に比喩表現をふんだんに駆使してより情動的に。そして、使う比喩も更に厳選してより世界観を主張すると良いと思います。例えば宮中の壁の作りや柱の色、人々の着る服装や立ち振舞いの所作。森の中に生きる植物や動物の名前。など、和風要素を主張できる材料を見逃さず、ここぞとばかりに情景描写を描きまとめ、折を見ては散りばめて。和物特有の語彙やアイテムをもっと増やすと良いかもしれません。そうすれば、風情と神秘に溢れた和風の世界観を格段に美しく描き上げる事が出来るでしょう。また、特に戦闘の描写が弱い印象を受けます。構え、太刀筋、動き、距離感、視点など、更にこだわり細かく丁寧に描写することで、躍動感が違って来るのでは。 次に、演出力について。章の合間に入る挿入は非常に良いと思います。私が気になったのは、旅の始まりを急ぎすぎていて、メイン二人の人間味が活かしきれていないような。二人が出会う前、それぞれはどんな生活をしていて、それぞれをどう思っていたのか。銀獅子視点だけでも良いと思うので、それを描くだけでもメイン二人の人間の深みが違って来ると思います。また、魔物や精霊刀の設定が、後から帳尻合わせのように説明されるのも盛り上がりません。世界観の根底にあるものなので、前もってもう少しだけ具体的な伏線を張っておくと良いでしょう。人物の心理の変化も少し急な印象です。人の心はそう変わらないからこそドラマがあるのでは。 と、気になった点はそんなところです。全体的に高い完成度で小綺麗にまとまっていて、読みやすい作品に仕上がっていると思います。これからも頑張って下さい。
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隣の猫さま コメントをいただき、ありがとうございます! 作品をここまで細かく分析していただき、嬉しい限りです。 ご指摘いただいた人物の演出力、私自身ももっと構成の時点で練らなければと思っていたところでした。 また、その他ご指摘いただいた点についても、今後改善、修正をしていきたいと思います。 ありがとうございました!

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