にゃんデッド

猫が手放しで賞賛する秀作。ご自身の作品のスピンオフのようですが、これ一本で十分勝負できるクオリティですね。 珠玉の王道ファンタジー。ちょっと異世界に憧れただけのそこいらのファンタジーとは、いく回りも世界観の深さが違います。加えて、女性の一人称で語られる文章はとても滑らかで、綿密な描写と高い表現力で描かれる世界は非常な臨場感があって、映画でも見ているようでした。そして、何より、主人公の魅力です。女性でありながら傭兵のアリーが見る世界は、傭兵らしく擦れていて、年相応に大人びていて、それでも女性らしさがみずみずしくて、えもいわれぬ魅力があります。分を弁えながらも騎士達に物怖じない掛け合いも、軽快で心地好いですね。傭兵が主人公の話なのに戦闘シーンが全く無いのも、良い意味で期待を裏切られました。池波正太郎の戦国幻想曲を思い出します。どこまでも、描くのは王家とそれに仕える騎士達の姿なんですね。 エブリスタの求めているだろう色とは少し路線が違いますが、とにかく秀作。私ごときが指摘できる欠点など皆無ですが、僭越ながらちょっと主観でアドバイスするだけなら。 他の描写が優れているだけに、登場人物の魅力が少し埋もれ気味に感じます。特に騎士達、副隊長さん以外の彼らです。勿論、最近流行りのぶっ飛んだキャラクターなど論外の作品です。騎士が騎士らしく描かれているのが大きな魅力で、それ故に個性が埋もれかちになるのは仕方の無いので、目付き、髪形、持ち物、言葉遣いなど、地味な所を攻めると良いでしょう。騎士という枠組みの中でも微妙にゆらぐ人間性を醸しながら、地味なので繰り返し繰り返し。それにより、読者の頭にしっかりとキャラクターが残ると思います。凄く難しいと思いますが。ちなみに、私には出来る気がしません(オイ) それにしても、これ程のものが埋もれているとは、勿体ない。これからも頑張って下さい。

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