柚季蕭夏

いい意味で少々甘めの幻想小説、という感じかな。 ストーリーをよくここまで膨らませたなーと感心しました。 「両性具有」に関しては残念ながら企図したようには描かれてはないでしょう。むしろ単に主人公の「中性」さだけが前景化してますね。 「記憶」と「夢」がこの小説の大枠にあるように思います。 そして、ある種幻想的な雰囲気のメタファーとしてキャラクターたちは物語に充分寄与しているかと。この辺りは「電話男」やその周辺のキャラクターとの関係性なんかは特に。さしずめ「属性のあわいにいる者たち」というところかな。 残念なのは物語自体が後半になるほどとっ散らかってきて、収拾がつかない状態に追い込まれたのが露呈しているように思いました。あれだけ引っ張った「電話男」が無意味に終わるのは、「虚構」と「現実」の寓意としてはちょっと弱いような。この寓意を活かすなら、メタプロットに言及するくらいのアクロバットな手法のほうが衝撃度が高い気もします。 また、思弁的にも思想的にもまだまだ浅い部分があって、脆弱な印象です。 全体として悪くはないですが、メランコリックな弱さは、「春樹チルドレン」と揶揄されてしまうので気をつけましょう。 長々と失礼しました。
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感想というか批評ありがとうございました。 書いた本人なのに自分で自覚なしに書いてたんだなぁ…ってわかりました。そうやって深く読まれたのもうれしかったです(まずは精進すべきだろ!と自分につっこみをいれつつ) 重ねてありがとうございました!

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